うまい酒、まずい酒。

2019.11.1

僕が田舎の集落に住んでいたときの話。

今日は引っ越して来て初めての飲み会だ。

皆で集い、自然の恵みに感謝し、収穫を祝い、それぞれ食事を持ち寄り、酒を酌み交わす。

用意されていたのは日本酒。なぜかお猪口ではなく湯呑みで飲む。

この集落では、相手に注がれた酒を全部飲まないと相手に返杯が出来ないというルールだそうだ。

しかも僕は新参者だからか、全員から集中攻撃(歓迎してくれている)を受け、僕の目の前には、酒の入った湯呑みが十杯ほど集まった。

飲み進めていくうちに、何度か意識が飛びそうになる。

この時すでに覚えているだけでも30杯近く飲んでいた。僕はふと、あることに気がつく。

飲んでいる酒が、注いでくれる人によって味が違う気がしたのだ。同じ一升瓶から注がれているにも関わらずだ。

酔いが回っておかしくなったのかもしれないが、確かに味が違う。一度気がつくとそればかりが気になって、考え始める。

例えば、普段大声で怒鳴り散らしている集落の長のような人の酒は旨い。優しくて柔らかい味だ。

逆に普段は明るい、優しいおばさんの酒がまずい。尖っていて冷たい味。これは一体なんなんだ?心が味に出ているのか?

僕はふと、ある光景を思い出した。時代劇などで酒瓶を肩に抱え、浪人なんかが友人の家に酒を飲みに行く。サシで二人で飲む。僕はそれを見て、まあお酒が好きなんだろうとしか思ってなかったが、そうではなく、その相手の注いでくれた酒の味が飲みたいのだ。

今の僕のように人によって味が違うことが分かれば、あの人の味を飲みに行こう!という状態になるはずだ。これのことを「うまい酒」というのではないか?と、酔いが回った頭で勝手に結論を出した。

それからは無意識に集落の長の酒ばかりを飲んでしまう。旨いのだ。後で人から聞いたのだが、その日の僕は悪酔いしたり、吐いたりせず、走って家まで帰ったらしい。

家内の話では家に着いてから、物凄い速さで家の中の掃除や家事を始めたらしい。謎の酔っ払いの完成だ。きっと何かしらのエネルギーをもらえたのだろう。

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