マシュマロ

2019.10.1

大分県中津市に、「マシュマロ」という自家焙煎の喫茶店がある。僕はこの店の珈琲が好きで、何度も通っている。しかし、 9月25日に惜しまれながら閉店。 47年間の営業に幕を下ろした。

86歳になっても未だ焙煎をしている店主。僕がこのお店を好きな理由は、珈琲の味、そして、こだわりの塊のような店主の哲学。

通常、自家焙煎のお店の焙煎機は数10万円から高くても500万円位。しかしマシュマロの焙煎機は1200万円。日本でこの焙煎機を使っているのは、UCC(上島珈琲)とKey Coffee(キーコーヒー)とマシュマロだけだそうだ。個人店では唯一である。

なぜそんな高価な焙煎機を導入したのか店主に聞いてみた。なんでも、中津は店主の地元らしく、地元の人に本物の珈琲を飲ませたいと思ったからだそうだ。店主はこうも語っていた。「47年間やって分かった事は、味の違いの分かる人間は世の中全体の一割位しかおらん。残りの九割は味の違いが分からん。だから味の分からんもんにちゃんとしたもん出してもどうもならん。つまらん。」と。だけど、閉店の一週間前、僕がお店で珈琲を飲んでいると、次から次にお客さんが店主に贈り物を持って来てお礼を言っている。中には涙目になって、お店をやめないでと訴えている人もいた。おそらく、店主から見ると、珈琲の味を好んでくれるお客さんはいても、同じ目線で珈琲を論じ合える人間が47年間ほとんどいなかったという事なのかなと、僕は思った。いつの時代もパイオニアは孤独だ。僕はなんだかいたたまれない気持ちになった。だけどそのおかげで、僕は美味しい珈琲を知る事が出来たし、きっとこれまでにマシュマロの珈琲を飲んだ人の味覚のレベルも確実に上がっているだろう。

商売が上手でお金を儲けているお店はたくさんある。しかしそのうち何割のお店が人の記憶に残るだろうか?誰の真似もせず、自分で道を切り開き、高度な次元で焙煎を47年間も続けた店主を僕は絶対に忘れないだろう。

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