お小遣い

親戚にこうじおいちゃんという人がいる。性格はひょうきんで会話のほとんどが悪ふざけ。だけど時には親戚の子供達を真剣な目で叱る事もあった。普段ふざけている人が真剣な目になるので、子供達はその雰囲気を感じ取り、黙って説教を聞いてしまう。そんなおじさんだ。
僕がまだ小学生だった頃、正月やお盆に親戚が集まることがあった。その中に僕と同い歳の従兄弟がいた。なぜか妙なライバル心があり、その日も例に漏れず喧嘩していた。
そんな僕ら二人のところにこうじおいちゃんから声がかかる。怒られるのかな?と思いながら近寄っていくと、なんと、僕ら二人におこづかいをくれるという。いつもは百円くらいなのに、その日は長財布から千円札を出した。ワクワクした。しかしその千円札はこうじおいちゃんの手によってビリっと破られたのだ。僕と従兄弟はその状況をあっけにとられて見ていると、その破れた千円札を半分ずつ僕らに渡し、「これで好きなもん買っていいぞ〜」と言って去っていった。
僕ら二人は、半分になった千円札を渡され、放心状態だった。僕は頭の中で考えていた。「千円の半分だから五百円なのかな?」しかし、おそらくお店で出しても使えないような気がした。当時田舎の小学生だった僕だが、なんとなくそう思った。どうしたらこのお金を使えるのか?半分あるという事は見えないもう半分の千円札が必要だ。僕は10分ほど考えた。ふと横を見ると、同じように考え込んでいる奴がいた。従兄弟だ。目が合った。笑いが出た。そう、協力するのが一番早いのだ。その後一緒に近所の駄菓子屋に行き、お店の人に頼み、五百円ずつ買い物した。気が付くと仲直りしていた。子供は単純だ。従兄弟と目があった瞬間なぜ笑いが出たのか?自分一人でなんとかしようとしていた事が恥ずかしかったのだ。お互いに意地を張って謝る事が出来ず、欲に目が眩んだ状態を客観視させられ、なんだか照れ臭くて笑いが出たのだ。その時は子供だったので、お菓子が買えて満足していた。現在の僕は人と喧嘩しても、相手より先に謝るタチだ。それは、喧嘩して、仲直りした後、それまで以上に仲良くなれるという事を、知っているからだ。頭ではなく体に刻むのは難しい。それを、こうじおいちゃんは千円札を使って簡単にやってのけたのだ。
駄菓子を買って帰ってきた僕らを見て、おいちゃんは何も言わずにニヤリとした。
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