卵焼き

6歳の時に初めて卵焼きを作った。一度も作った事がないので見よう見まねで作ってみる。カスカスになって美味しくない。しかも母が作るのと味が違う。
それからお腹が空いて暇さえあれば卵焼きを焼く。気がつけば毎日焼いていた。何度焼いても母親が作った卵焼きのようにならないので、母にコツを聞いてみることにした。「何度も試してみたけど、おかんが焼いたのと全然違う。なんか調味料入れとる?」と僕は聞いてみた。すると母は、「何も入れとらん。あんたとは卵焼きの年季が違うんよ。愛情よ、愛情。」と言うので、僕にはあの味は出せないのか?とかなり悔しい思いをした。
月日は流れ、僕が20歳になった頃、実家に帰って昼ごはんを作っていた。その時なぜか母を問い詰めてみようと思い、こう切り出した。「卵焼きずっと焼いて研究しとるけど、どうしてもおかんみたいにならん。なんか調味料入れとるやろ?ありとあらゆる作りかたをやった。絶対なんか隠しとるやろ?」と。すると母は、「お酒」と一言。それを聞いて僕は早速日本酒を入れて焼いてみる。何のことは無い、母と同じ味の卵焼きだ。愛情でも何でも無い、お酒だ。
母がなぜもったいつけて隠していたのかはわからないが、僕はスッキリしたと同時に、ふと少し悔しい気持ちになった。よく考えてみると、14年かけてもその答えにたどり着けなかったのだ。なぜなら子供は自分から日本酒なんか飲まないからである。人間、何も知らずに自分だけで答えを見つけようとするのは至難の技だ。人に聞かず、本も読まず、ましてやインターネットで調べたりもせず。僕は自分だけで答えを見つけようとしたが、無理だった。それが悔しかった。しかし、14年でかなり卵焼きとは友達になれた気がする。常に意識は卵焼きにあるので、人の家に行っても卵焼きが出ると、どんな物が入っていて、どんな焼き方をしてるかを想像しながら食べていた。一つの事を、答えが出るまで追求して、研究するのはとても楽しい。それ自体が僕の趣味とも言える。インターネットで何でもすぐに調べられる時代だけど、僕は調べずに「自分の頭」で考える事を日々楽しんでいます。
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